過度な施肥による硝酸態窒素の残留と人体への影響

要約

野菜に含まれる硝酸態窒素は窒素代謝によってアミノ酸を合成してうまみ成分になるが、そのまま残留することがあり、過剰な施肥によって残留量が多くなる傾向がある。もし人間が硝酸態窒素を摂取した場合は血液中のヘモグロビンを酸化させ、ヘトヘモグロビン血症などの酸欠乏症を引き起こす可能性がある上、発がん性物質であるニトロソアミンを生じる問題が指摘されている。

土壌中の硝酸態窒素

有機物が分解するとまずアンモニア態窒素が生成される。アンモニア態窒素は土壌中の細菌によって亜硝酸態窒素→硝酸態窒素まで変換されることがある。

野菜のうまみに変化するが

硝酸態窒素は植物に吸収されると、酵素によってアンモニアグルタミン→アミノ酸のひとつであるグルタミン酸となる。さらに他のアミノ酸が合成され、これらが野菜のうまみ成分となる。

過剰な施肥によって硝酸態窒素が残留する

硝酸窒素に変化しうる肥料、例えば、硫安尿素、または有機肥料などが過剰に施肥された結果、葉物野菜の中に大量の硝酸態窒素が残留することがある。

摂取すると酸欠乏症や発ガン性物質を生じる

人間が硝酸態窒素を大量に摂取すると、腸内細菌によって亜硝酸態窒素に還元され体内に吸収、血液中のヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビン血症などの酸欠乏症を引き起こす可能性がある。また、2級アミンと結合してニトロソアミンという発ガン性物質を生じる問題が指摘されている。

ニトロソアミンの発ガン性については、人間が対象の臨床試験や医学論文などでは発ガンに関わる有意なデータは出ておらず、FAO/WHO食品添加物専門家会議(JECFA)は硝酸塩の摂取と発ガンリスクに関連があるという証拠にならないという見解を発表している。

が、富山市ファミリーパークでグレビーシマウマが肺水腫による呼吸不全で死んだケースでは血液検査によって90ppmの硝酸態窒素が検出されたことから、いずれにしても有毒であるに違いない。